卒業式

≪学校長 式辞≫

  今年の冬は、積雪は少ないものの山陰独特の氷雨が毎日のように降り、底冷えのする厳しい冬でした。立春を過ぎ、陽も長くなり、春の息吹を感じ始めた頃、大雪に見舞われましたが、それでもようやく校内の草木も桜の木々にも、雪柳の木々にも新芽を見つけ、春の到来を実感しています。

  さて本日ここに第10回卒業式を挙行できますこと、そして君たち70名の旅立ちを皆様と共にお祝いできますことを心から感謝いたします。 私は、晴れて卒業式を迎えているみなさんを感慨無量の気持ちで見つめています。 三年前暁星の教育がどのようなものかを十分知ることもなく、入学式に幾分緊張した面持ちで、みんなはこの場に立っていました。三年の積み重ねは、みんなが少年から脱皮して、今 青年を感じさせます。

  三年前、マリンピアでのオリエンテーション合宿を通して、祈り・美化・学習を基軸とした学校生活の説明を受け、ひとつひとつを先生や上級生から指導を受けながら、それを実践する日々に窮屈さを感じたり、これに意味があるのかと自問自答したり、抵抗した時期もあったでしょう。そして自由に過ごしてきた中学生活を懐かしむこともあったでしょう。「ひとりひとりと向き合う教育」というこの学校の看板は、名実ともに実践されてきたと思います。

  「愛の反対は、無関心である。」とマザー・テレサのことばにあります。私は校長として、生徒と先生方のかかわりを見つめながら、生徒ばかりではなく、先生方も親も戦いの日々であったと思っています。これでもわかってくれないのかと、先生は先生なりに、生徒は生徒なりに苦しみ、悩みながら、真剣に向き合ってかかわっている姿を静かに見つめながら、いつかこのかかわりの深さを心から感謝できる日が来ることを確信しながら見て、声をかけて、成長のプロセスを見守っていました。決してあきらめない、希望をもって挑戦する日々の連続でした。

  そんな中で、考える力、みんなの前で発表する力、上級生として後輩を育てる力など、人間として大切な力をつけていったと思います。

  本校はここ獅子崎に移って12年目を歩んでいますが、今年の生徒募集の一環として、中学三年生に向けて、卒業生や在校生がスピーチをしてくれました。助産師、看護師、栄養士、車のディーラー、大学生、そして進学先・就職先が決まった在校生、体験プログラムにチャレンジした在校生など、ここを育っていった卒業生、そして在校生が、それぞれしっかり堂々と発表している姿を見て、大きな励ましをもらいました。

  現代は、便利で快適で効率的な社会を求め続けてきた結果、社会のかげりを実感する事件や、世の動きをニュースを通して知ります。エボラ出血熱で多くの人が亡くなり、思いがけない自然災害でいのちをおとす人々のニュースで心痛む一方、人が簡単に殺され、危険であると報道されていても、薬物に手をだして、人を殺傷するニュース、イスラム国のテロ行為など世界は混沌としています。

  このような現実の時代だからこそ、この学校で教えた人間としての基礎・基本をしっかり発揮してください。私達はいきなり大きなことはできません。そうです。神様は、私達一人一人を愛をもって、創ってくださいました。だから、あなたたちも一人一人を愛しなさい。みんな一人一人に与えられた賜物・能力を温かい人間関係をつくるために、社会に潤いを与えるために、平和の道具として、役立ててください。伝えることが得意な人は伝え、気づいて動ける人は動き、人の話しをよく聞き、人に寄り添える人は寄り添い、奉仕に喜びを感じる人は奉仕して下さい。頂いた賜物は、それぞれ違ってもその違いを感謝して互いに大事にして下さい。

  「私たちは大きなことはできません。小さなことを大きな愛をもって行うだけです。」「あなたはあなたであればいいのです。」 「正直で誠実でありなさい。人はあなたをだますかもしれません。しかし正直で誠実でありなさい。」マザー・テレサのことばです。

  さていよいよ君たちは、ここを巣立って、大海原に船出します。先ほど述べたように、世界を見ても、日本の社会を見ても、考えられないような事件や出来事を目にします。そしてこれから君たちも、様々な出来事に遭遇していくでしょう。そんな時、今日の聖書の箇所ローマ人への手紙を思い出してください。苦難をも誇りとします。私たちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを、すでにこの学校生活の中で、いろんな場面で考えさせられ、忍耐して学ぶことも多かったと思いますが、そのことで練られ、精神的にたくましくなり、希望に向かう道が整えられたことを体験したと思います。その体験を思い出し、暁の星暁星を思い出し忍耐し頑張ってください。「みんなの心の故郷は暁星です。」一年を通して、この学校の四季おりおりの風景を目に焼き付けて下さい。この学び舎の自然は、生徒の心をなごませてくれます。疲れた時には、どうぞ母校に帰ってきてください。

  最後になりましたが、また高いところからではありますが、第10回京都暁星高等学校卒業式が挙行できますことを教職員一同と共に心より感謝申し上げます。この晴れの卒業式に、ご多用な中、休日にもかかわらず、多数の来賓各位のご臨席を賜り、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。さまざまな想いで三年間私たちの学校にお子様を託してくださった保護者の方々に感謝申し上げます。お子様方の卒業おめでとうございます。私ども教職員一同至らない点も多々あったと思います。どうかお許しください。この晴れの日を迎えられましたこと、皆様のご支援の賜物と感謝しております。ありがとうございました。

  これをもちまして、私の式辞とさせていただきます。
 

聖書の朗読

 
卒業証書 授与

 
来賓 祝辞


在校生代表 送辞

  冷たい風の中にも、少しずつ春の気配を感じることのできるこの良き日、京都暁星高等学校を巣立っていかれる3年生の皆様、ご卒業おめでとうございます。

  私たちが3年生の皆様と学校生活を共にしたのは、2年という短い間でしたが、思い返すとたくさんの思い出がよみがえります。

  中学から高校へ進学し、右も左も分からなかった私たちに優しく声をかけ、細かなところまで丁寧に教えて下さいました。馴染みのない割烹着を着ての掃除、講堂朝礼、毎週開かれる委員会ごとの定例会、すべてにおいて戸惑う私たちに優しく声をかけ、一緒に動きながら教えて下さったその背中は、とても大きく見えました。委員会では先頭を切って会議を仕切るリーダーシップや、掃除の時、的確な指示を出すために周囲をよく見ることなど、たくさんのことを学ばせていただきました。

  文化祭では「僕らの主張~私たちが見る社会~」のテーマのもと、沖縄、フィリピン、東北支援への姿勢を力強く主張されるステージを、ただただ「すごいなぁ」という思いで見ていました。息の合ったエイサーやバンブーダンス、全員で声を合わせての歌、その全てにチームワークの素晴らしさを感じると同時に、沖縄への修学旅行、フィリピン支援のウォーカソンとワークキャンプ、東北、釜石でのボランティア、それぞれに真剣に向かい、考え、心を込めて準備されたことを感じ、その主張に胸が熱くなりました。

  また、生徒会や委員会活動では、私自身生徒会本部の一員であったため、先輩方と関わる機会が本当にたくさんありました。特に本部の活動では、昼休み、放課後をはじめ、土曜日も使い会議をしました。昨年の冬、私にとって初めてのリーダー研修会は一番印象深く、今でも鮮明に思い出します。リーダーとは、みんなの前で発言する前姿、普段の姿、そしてその人の持ち味・個性といった後ろ姿、その全ての全人格で接すること、意見の違う人、力の弱い人とも一緒にやっていこうという気持ちと根気、そして孤独をも恐れないなど、リーダーとしての基本的な姿勢を学びました。学んだことの実践として、寒い冬、一日がかりで学校周辺のゴミ拾いをしました。草むらの中に分け入ってゴミを拾い、拾ったゴミを一つ一つ分別しました。寒さとゴミの汚さにへとへとになりましたが、へとへとになった体の疲れと共に、3年生の皆様方の爽やかな動きを通して、リーダーとして全体に仕えるとはこういうことなのだと、私の中に刻まれていったように思います。

  11月、クリスマス活動に向かう直前、フィリピンワークキャンプを10年にわたりコーディネートして下さった松井聡子さんによる「協力の現場で生きるということ」と題した講話がありました。自分の意見や意志を持ってハキハキと質問される先輩方の姿は、私たちが目指す憧れの姿でした。その後のクリスマス活動は、11月のウォーカソンではウォーカソン係を中心に支援の呼びかけをし、200万円以上の大きな金額と、3000人以上の心をお預かりすることができました。その他、クワイアやデコレーション、タブロ、メッセージ係でも、強制したり、押し付けたりするのではなく、みんなで一緒にやっていこうという姿勢を大切に、私たちを引っ張って下さり、手応えのある学校クリスマスになりました。

  学校生活の様々な場面で、前に立つ先輩方の姿を見ていましたが、放課後、シーンと静まり返った3年生教室で黙々と勉強される皆様の姿がいつもありました。伝えられる言葉の厚みは、自分のすべきことから逃げないあり方とつながっていると思いました。

  昨年末、世代交代の時期を迎え、今度は私たちが最上級生として全校生徒を引っ張っていく番となりました。どこかでいつも先輩方に頼っていた私たちには、その自覚を持ち、先頭を切っていけるのか、不安でいっぱいです。しかし、戸惑っている私たちに「分からないことは聞きにおいで」と言ってくださったことは心強く響きました。

  尊敬する皆様と同じ時間を歩ませていただいたことに心から感謝し、自分の頭で考え、労を惜しまず、最後の一人まで粘り強く関わる暁星の精神を、私たちが全力で引き継いでいくことをお約束して、私たち在校生一同のお別れの言葉と致します。
 


卒業生代表 答辞

  長く厳しかった冬の寒さも和らぎ、日ごとに春の暖かい兆しが感じられるようになりました。本日は、私達卒業生のために、このような盛大な卒業式を挙行していただき、心から感謝申し上げます。

  3年前、新しい学校生活への希望と不安を抱え、入学しました。毎日のお祈り、割烹着を付けての掃除、新しい環境に戸惑い、ついていくのがやっとでした。校則も厳しく、風紀面では何度も注意を受けたことを覚えています。

  先生方からは、日々の学習だけでなく、家庭での過ごし方まで細かにアドバイスを受け、ここまで言われるのかと、驚いたこともありました。

  しかし、今では、「手を抜かずに最後までやり抜くこと」や、「丁寧に心を込めて取り組むこと」など、暁星ならではの精神を教わっていたのだということがしみじみと感じられます。

  暁星高校は、私たちに多くのチャンスを与えて下さいました。先生方は一人ひとりの目標を実現に導くために、学習面だけでなく、委員会やボランティア活動など、挑戦をさせて下さいました。それらの挑戦はどれも初めて体験するものばかりで、「自分にはできない」と消極的になり、初めから諦めの気持ちを持つことも多くありました。それでも、自分で限界を決めず、向き合うように励まされ、勇気を持ち、挑戦することができました。

  実際に挑戦してみると、度々壁にぶつかり、上手くいかないことに悩み、徐々に不安がつのり、時には泣いてしまう日もありました。その度に、友人や先生に励まされ、なんとか乗り越えてきました。

  また、学校行事で活動した時には、話し合いが上手く進まず、何度も考え直しをするなど、全体で動く難しさに悩みました。しかし、そのような時こそ、本音の話し合いを大事にし、コミュニケーションの輪を広げることが大切なのだと学び、乗り越えることができました。

  特に印象深いのは、修学旅行です。2年生の中頃から事前学習を始め、何度もグループワークに取り組みました。1度も話したことのない人がいたり、仲の良い友達といることが当たり前になっていたりと、初めは上手くコミュニケーションをとることができませんでした。それでも、課題に取り組み続け、迎えた修学旅行でも、問題があれば投げ出さずに、生徒が主体となって解決に取り組み、話し合いを何度も重ねたことは今でも忘れることができません。この一連の取り組みを通して学年全体の雰囲気も和やかになり、グループワークをしても、今では一人ひとりの話し声が飛び交っています。

  また、私は修学旅行で学んだ「無関心は暴力だ」という言葉が、今でも忘れることができません。事前学習で自分たちがいかに物事に関心を持っていなかったのかを痛感していたため、この言葉は深く残りました。同時に、関心を持ち、知ることで、今までの狭い視野が広がったことも実感しました。この言葉を忘れずに、他者と共に歩むという暁星で学んだ精神を糧として、卒業後も歩んでいきたいと思います。

  そして、3年生になると、最上級生としての役割を果たすことはもちろんですが、一人ひとりが自らの進路決定の道に奮闘する日々でした。睡眠時間も少ない中、毎日が進路実現に向けて、今までにない量の問題集や面接練習に取り組み続ける努力の日々でした。しかし、なかなか成績が伸びず、成果が感じられないことに、苛立ちや焦り、不安を感じ、受験のプレッシャーに押しつぶされそうになり、投げ出したくなる時も度々ありました。それでも、先生方や家族、友人など、周囲の人々に励まされ、信じて課題に取り組み続け、徐々に弱点を克服していきました。試験当日は、緊張と不安で余裕がない中でしたが、今までの努力を信じ、この大きな試練を乗り越えることができました。

  自分に挑戦すること、新しい価値観に出会うこと、暁星からいただいたチャンスには多くの学びがありました。それらは決して楽しいものばかりではなく、自分の弱点を痛感させられるものでした。しかし、努力すること、互いに協力して本音の取り組みをすること、その精神を身に付けることで壁は乗り越えることができるということを教えていただきました。この3年間、こんなにも多くの出会いや体験をさせていただけたのは、多くの方々からご支援いただいたからです。

  先生方、委員会や行事、受験など、日々の生活の忙しさに追われ、悩む私たちといつも最後まで向き合い、自分のことのように喜怒哀楽し、共に歩んでくださった3年間のことは忘れることができません。本当にありがとうございました。

  そして、ここまで成長を見守ってくださった、お父さん、お母さん、家族のみんな。素直になることができずに、反抗してしまったり、心配をかけ続けました。それでも、いつも私たちのことを考え、時には励まし、時には叱り、親身になってくれた姿は、私たちの心の支えでした。心から感謝しています。ありがとう。これからも私たちを応援し、見守ってください。

  在校生のみなさん、これからたくさん壁にぶつかり、悩むことも多いと思います。そんな時こそ、逃げずに向き合い、乗り越えようと努力してください。必ず、その努力は報われます。様々な出会いやチャンスを活かして、それぞれの成長に繋ぎ、暁星高校での生活を充実させてください。私たちは、暁星で養った精神と、いただいた教えを信じ、ここを旅立ちます。常に他者と歩むことを忘れず、周りの人々に感謝の気持ちを持ち、日々を歩んで行きます。

  最後になりましたが、伝統と歴史ある京都暁星高等学校が、より一層厳しくも温かい学び舎であることを心からお祈り申し上げ、私たち卒業生一同のお別れの言葉といたします。
 

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