第18回卒業式が挙行されました。

 2月28日(火)に卒業式が挙行されました。昨年度の大雪とは打って変わって,春らしい暖かい一日をいただきました。また,今年度も新型コロナ感染拡大防止の観点から,ご来賓の方々へのご案内は控えさせていただきましたが,たくさんのご祝電をいただきました。ありがとうございました。

 
 学校長式辞                     卒業証書授与 

 
    皆勤・精勤賞の賞状授与          谷口神父様よりご祝辞をいただきました    ​

 
    PTA会長よりご祝辞をいただきました             卒業記念品目録贈呈                          

 
    記念品授与                     在校生代表送辞 ​    


卒業生代表答辞

学校長式辞
 3年前の入学式の式辞。「世界中に拡がる新型コロナウィルスによって、混乱と不安の中にいる人々のために祈ります。私たちも毎日落ち着かない、色々と神経を使わなければならない日々が続いていますが、そんな中縮小した形ではありますが、入学式が挙行できますこと、本当に感謝です。」から始め、キング牧師を取り上げました。I have a dream.(私には夢がある)。人間が肌の色や学歴によってではなく、人格の深さによって評価されることを夢見て、その夢に向かって真剣に生きました。夢を持つこと、望みと夢はその人を成長させるのです。その夢を持てるように、暁星が「気づきの場」になることを願っています。すでにあるもの、あることの気づき、生き方の気づき、知ることを通して愛することの気づき、交わりの豊かさの気づきなど、そんなことを体験してほしいと思います,と話ました。しかし、入学してすぐ休校、その後分散登校と不安なスタートになりました。それから3年間、自粛生活を経験し、計画していた行事や体験プログラムが中止になり、ネガティブな気分になったこともあるでしょう。目に見えないウィルスへの不安を持ち、感染防止に向けて、マスクを着用しての生活が続いていますが、そんな中、縮小した形ではありますが、このように第18回卒業式が挙行できますこと、そして皆さんの旅立ちをお祝いできますことを、心から嬉しく思っています。
 そして、来賓として、カトリック教会から谷口神父様、PTAから池本会長様がご出席くださり、高い所からではありますが、御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
 さて、この学び舎を巣立っていく、3年生の皆さん、卒業おめでとうございます。みなさんは、人生の通過点である3年間の高校生活を、キリスト教の精神を基盤に置いたカトリック・ミッションスクール暁星で過ごしました。この間、ミサやみことばの祭儀、昼の黙祷、宗教の授業、行事、最後の黙想会などを通して、聖書のことばに出会いました。大切にしてください。
 暁星での具体的な学校生活では、祈り・美化・学習の三本柱を通して、中学校生活とは違う雰囲気の中で、今まであまり意識しなかったことを教わりました。毎日のさまざまな場での祈りを通して、手を合わせること、自分のため、人のために祈ることを教わりました。そして、誰かのために生きることの大切さ、実際に身体を動かしてやってみることを授業や美化を通して学びました。エプロンをしての掃除、敷地内の除草作業など、まるで修業にきたように感じたかもしれませんが、これが暁星の特色なのです。型から入り、それに意味があることに、少しずつ気づいていくやり方なのです。この3年間で、この型が身についたと信じています。そして今年度は文化祭・体育祭・ウォーカソン・クリスマスなどの行事や委員会活動、広島修学旅行、そして総合探究の発表など、コロナ感染防止に神経を使いながらになりましたが、実施することができました。そして最後に振り返りの時間を持ちました。人のために自分の時間・タレント・労力・おもいを差し出すトレーニングになったと思います。
 今日読まれた聖書は、「あなたたちは、地の塩、世の光です」の箇所です。この御言葉は教えではありません。宣言です。君たちは「地の塩、世の光」だと宣言しているのです。塩は頭に浮かべてください。塩は主張しません。自分の姿を溶かし見えません。塩はミネラル分として、体に必要ですし、また食べ物の味付けをし、腐るのを防ぐ働きがあります。日本では、清めのためにも塩を使います。光はそれと正反対で確かな存在としてまわりを照らします。隠されず・輝かすことによって、人々をひきつける求心的な働きをします。どの光も、人の心を温め、明るくし、安心させます。そして時には希望や勇気を与えることもあります。私たちは大きな光になれなくても、小さな光として誰かの心を喜ばせ、楽しませ、希望や勇気を与えることができるのです。このように私たち一人ひとりも、この世に味を付け、世界を照らしていく存在なのです。私たちは、生まれた瞬間から、この地でそしてこの世界で、その使命を果たすよう、神様から望まれているのです。
 私たちは、特にこの1年、日々、平和を求めて祈り続けてきました。昨年は、「戦争と平和」と言う言葉を意識せざるを得ない1年でした。2月に始まったロシアとウクライナの戦争、12月には反撃能力の保有を政府が決定。北朝鮮の弾道ミサイルの発射、中国の動きも気になります。戦争、核、敵基地攻撃能力など、いずれの用語も破滅を象徴しています。聖書マタイの福音書には「剣をさやに納めなさい。剣を取るものは、皆、剣で滅びる」とあります。相手を力でねじ伏せても、いつまでも強いままではいられず、さらに強い者によってねじ伏せられます。この繰り返しが人間の歴史です。剣とは結局相手をねじ伏せる暴力です。暴力は復讐の暴力を生んで、連鎖的に続いてしまいます。イエスは、自分を暴力的に逮捕しに来た人たちにも抵抗せず、非暴力を貫きます。イエスが教えてきたことは、人を大切にすること、愛することです。イエスは、暴力の連鎖を断ち切って、ゆるすことを教え、愛の連鎖が続いていくことを願っているのです。「戦争を前にあきらめてはならない。和解の種を育て、平和の叫びを天にあげよう。」と教皇フランシスコは言われています。今難しい世界の状況にある私たちが、暴力や憎しみではなく、平和を推進する人間になることが求められています。世界の動き、国内の動きを注視していきましょう。そして、アシジのフランシスコ「平和を求める祈り」を唱え続けていきましょう。
 自分も他人も大事にする生き方を続けてください。暁星で見つけたことを、学んだことを自分の中心軸にして旅立ってください。他人と比較するのではなく、自分らしく生きてください。勇気を出して、さまざまなことに挑戦し続けてください。周りの人に希望を与えてください。人と人とのかかわりを、つながりを大事にしてください。時には暁星を思い出し、声を聞かせてください。私たちはみんなの幸せを祈っています。
 最後になりましたが、保護者の皆様にひとこと感謝申し上げます。マスク姿での入学、マスク姿での卒業になりましたが、この3年間さまざまな行事においては、皆様には密を避けるという学校の方針を受け入れ、協力、参加くださり、ありがとうございました。コロナ感染防止にも協力くださり、感謝しています。そして、この3年間、毎日のお弁当作り、休日には車での送迎など、大変だったと思います。本当にありがとうございました。この時節、私ども教職員一同至らない点も多々あったと思います。どうかお許しください。この晴れの日を迎えられましたこと、皆さまのご支援の賜物と感謝しております。ありがとうございました。
 これをもちまして、私の式辞とさせていただきます。

祝辞 レデンプトール会 谷口秀夫神父様
 卒業生の皆さん、京都暁星高等学校ご卒業、おめでとうございます。皆さんは、この3年間、コロナ・パンデミックによって、思うに任せぬ高校生活を送ったと思います。辛いこともあったでしょう。しかし、それも今となっては、生涯忘れ得ぬ特別な体験として、皆さんの心に刻まれるでしょう。
 私は、そのコロナ以来、YouTubeを見ることを覚えてしまいまして、こんな時間潰しをしてはいけないと思いながら、ロック・バンドONE OK ROCKの動画を観ていました。それは、毎年、NHKが主催して、18歳の若い人々1000人を集めて行われる「18FES」と言うイベントでした。皆さんも、おおかた18歳だと思います。2016年の録画ですから、皆さんは古いと言うかもしれませんが、そこでONE OK ROCKのTAKAさんが18歳の人々に送ったのは、こんなメッセージでした。長いですが紹介します。「皆さんには、これから色んなことが起きていきます。・・・そこで、一つ言いたいのは、もう皆さんは子供ではありません。立派な大人だと思っています。歳を取っても、残念な大人は世の中いっぱいいるし、たとえ未成年であっても、すばらしい思考をもって、すばらしい情熱をもって、この世で生きている人はたくさんいます。皆さん一人ひとりの中にある熱いものだったりとか、正義感だったりとか、罪悪感だったりとか、そういったことに嘘をつかずに生きていくことが、僕がいちばんモットーにして生きていることです。・・・これから色んなことが皆さんに起きてきますが、それに対する心のリアクション、感情に嘘をつかないで生きてほしい。そんな思いを込めて今回の曲を作りました」と言って、“We are” を熱唱したのです。1000人の18歳も一緒に歌いました。
 さて、このメッセージをつづめて言うと、「お粗末な大人が世間にいっぱいいるけれど、皆さんは、どんな時にも、自分の良心に嘘をつかず、まっすぐに生きていってください」ということだったと思います。私のような年配者は、高等学校の卒業式となると、賢しらな処世訓をどうしても言いたくなるのですが、このロックバンドは「まっすぐに生きてください」といったシンプルなメッセージを伝えました。むしろ、私のような宗教者こそ、伝えるべきメッセージではないかと教えられた次第です。私も皆さんに申し上げたいと思います。これから色んなことを体験されると思いますが、どんな時も、まっすぐであってください。
 確かにこれから社会に羽ばたいていく皆さんには「まっすぐに生きてください」だけでは、いかにもナイーヴな感じがしますが、しかし1000人の若者がONE OK ROCKと共に歌った“We are“は、決してナイーヴな歌ではありませんでした。(中略)皆さんの前途は洋々として希望に満ちていますが、しかし失望や絶望に陥れる色んな出来事が待ち受けている。しかし、そんなときには、皆さん、立ち上がる以外に方法はないのです。若い皆さんには立ち上がる力が備わっています。まずは立ち上がってください。立ち上がれば、失望・絶望は消えてしまいます。“We are” の歌詞はほとんど英語ですが、私はそのように受けとめました。
 ところで、私は処世訓を言わずにはいられないようで、もうひとつ申し上げたいことがあります。世の中には、「見えている現実」と「見ようとしなければ見えてこない現実」があります。見えるものが見えるのは当たり前です。何もしなくて見えます。しかしそれが真実であるかどうか分かりません。ただ目に見えるものをそのまま鵜呑みにしないでください。「見ようと努力して初めて見えてくる現実」、これに挑戦してください。鵜呑みにしてはならないもの、マスメディアはその最たるものです。流されないでください。例えば、ブームだからといって、簡単に乗っていいものなのか。それは安全なのか。危ないのではないか…。また同じニュースを同じ観点から、繰り返し繰り返しメディアを通して見せられるとき、それは真実なのか。一面的ではないのか。知らされていない事実があるのではないか。世論誘導ではないのか、と批判的に捉えてください。皆さんは暁星で3年間学んで、学ぶ姿勢を身につけられたと思います。学ぶ喜びも味わったことでしょう。しかしこれからは、暁星の先生のように懇切丁寧に教えてくれる人に出会うのは難しいでしょう。これからは、教えられて学ぶのではなく、自分で考え、前のめりになって探究して、真実を見つけてください。探究する人であってください。
 最後になりますが、今、私は「物事を鵜呑みにするな、流されるな、批判的に捉えよ」と言いました。しかしその前に「まっすぐに生きてください」と言いました。これは聖書的に表現すると、こうなります。「蛇のようにさとく、鳩のように素直であれ」(マタイ福音書、10章16節)。これは、真実に辿り着くために必要な心の姿勢です。ご卒業にあたって、この言葉を贈ります。本日は、まことにおめでとうございます。

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