第17回卒業式

 連日降り続いた大雪が残るなか,2月26日(土)に卒業式が挙行されました。今年も新型コロナウイルス感染症対策の観点から,ご来賓の方々へのご案内は控えさせていただきましたが,たくさんのご祝電をいただきました。ありがとうございました。

 

 

学校長 式辞
3年前の4月8日元号も平成から令和に変わるときの入学式。最初に聖書の一節が読まれました。「求めなさい、そうすれば与えられる。探しなさい、そうすれば見つかる。叩きなさい、そうすれば開かれる。」「みんなにとって大切なことは、求めること。知りたい、わかりたい、そのためには一歩を踏み出すことです。一緒に歩んで行きましょう」と。そして翌日からのオリエンテーション合宿の時には、私は3つのC、チャンス・チャレンジ・チェンジについて、京都暁星高校に入学したのはチャンスであり、この学校が提供する様々なプログラムや、提案に果敢にチャレンジすれば、この学び舎を巣立つときには、きっとチェンジしているでしょう。とにかくやり出さなければ何も始まらないと話しました。
しかし、2年前たったひと粒のウィルスが、ほんの数ヶ月の間に全世界の隅々にまで広がり、世界のどこにおいても同じ身体的苦痛と同じ社会的苦痛をもたらしました。現在もなお拡大しています。パンデミックの収束を祈りながら、感染防止と社会生活の両立を模索する日々が続いています。
私たちも、この2年間、自粛生活を経験し、計画していた行事や体験プログラムが中止になり、ネガティブな気分になったこともあるでしょう。目に見えないウィルスへの不安を持ち、感染防止に向けて、マスクを着用しての生活が続いていますが、そんな中、縮小した形ではありますが、このように、第17回卒業式が挙行できますこと、そして皆さんの旅立ちをお祝いできますこと、心からうれしく思っています。そして来賓として、カトリック教会から谷口神父様、PTAから池本会長様が、ご出席くださり、高いところからではありますが、お礼申し上げます。本当にありがとうございます。
さて、この学び舎を巣立っていく3年生の皆さん、卒業おめでとうございます。みなさんは、人生の通過点である3年間の高校生活をキリスト教の精神を基盤においた、カトリックミッションスクール暁星ですごしました。この間、ミサやみことばの祭儀、昼の黙祷、そして宗教の授業などを通して、聖書のことばに触れてきました。人間は身体と霊魂からできているので、わたしたちには、毎日物質的な糧と精神的な糧が必要です。ご飯を食べなければ、やせ細っていくように、心にも栄養を与えなければ、心がやせ細っていくのではないでしょうか。これからも心に栄養が与えられるためには、時には聖書を読むことをおすすめします。聖書は古い書物に収められたものではなく、その時代の人々とともにあった言葉です。今も現代に生きる言葉です。聖書の言葉は、味わえば味わうほど深いものがあります。できれば頭で理解したことを、心で受け止め、行いに結びつけていけば、それは本当に身についたものになるでしょう。今日も聖書の朗読で始まりました。ガラテヤの信徒への手紙から、私たち誰もが自由を持っています。たとえば、わたしたちが、今日一日をどう過ごすか、それは決まっているようでいて、決まってはいません。学校に行けば、今日受ける授業は決まっています。しかしわたしたちは、授業に出ることも、授業をさぼって欠席することもできます。会社に行けば今日すべき仕事はほぼ決まっています。しかしわたしたちは、仕事をすることも、仕事をさぼってふらりと旅に出ることもできます。どちらがより自由かというのではなく、どちらでも選べる自由が、わたしたちにはあるのです。問題はどんな自由の使い方をすればより価値があり、その人を幸福に導くかということです。聖パウロは、その自由を使って罪を犯すことを戒めます。当然です。罪はだれをも幸福にしません。聖パウロが勧めるのは、自ら愛によって互いに仕え合うことです。幸せは仕え合うとも書きます。愛をもって仕え合うことが、わたしたちの幸福の道なのです。暁星での具体的な学校生活では、祈り・美化・学習の三本柱を通して、中学校生活とは違う雰囲気の中で、今まであまり意識しなかったことを教わりました。毎日のさまざまな場での祈りを通して、手を合わせること、自分のため、人のために祈ることを教わりました。そして誰かのために生きることの大切さ、実際に身体を動かしてやってみることを、授業や美化を通して学びました。エプロンをしての掃除、敷地内の除草作業などまるで修業に来たように感じたかもしれませんが、暁星の特色は日本の武道や茶道のように、型から入り、それに意味があることに、少しずつ気づいていくやり方のです。この3年間で、この型が身についたと信じています。教皇フランシスコは、日本の青年に向けて、「他者のために時間を割き、耳を傾け、共感し、理解するという能力をみがいてください」と言われています。今年度はコロナ感染防止に神経を使いながら、工夫して行事や活動を実施することができました。みんなは色々な行事や活動の場面で、人のために自分の時間・タレント・労力・思いを差し出すトレーニングをしてきました。文化祭・体育祭、そしてウォーカソン。暁星のウォーカソンに関心を持たれた方々が、大阪から参加してくださいました。学校クリスマスの係活動。学校クリスマスのために、わざわざ岩手県の釜石から神父様が来てくださいました。そして最後、SDGsの発表のために、冬休みを使っての活動などを思い出します。自分も他人も大事にする生き方を続けてください。暁星で見つけたこと、学んだことを自分の中心軸にして旅立ってください。他人と比較するのではなく、自分らしく生きてください。勇気を出して、さまざまなことに挑戦し続けてください。時には暁星を思い出し、声を聞かせてください。
最後になりましたが、保護者の皆さまにひとこと感謝申し上げます。特にこの2年間、さまざまな行事においては皆さまには密をさけるという学校の方針を受け入れ、協力、参加くださり、ありがとうございました。コロナ感染防止にも協力くださり、感謝しています。そしてこの3年間、毎日のお弁当作り、休日には車での送迎など、大変だったと思います。本当にありがとうございました。この時節、私ども教職員一同至らない点も多々あったと思います。どうかお許しください。この晴れの日を迎えられましたこと、皆様のご支援の賜物と感謝しております。ありがとうございました。これをもちまして、私の式辞とさせていただきます。

 

 

祝辞 レデンプトール会 谷口秀夫神父様
卒業生の皆さん、京都暁星高等学校ご卒業、おめでとうございます。
皆さんにとって、京都暁星高校での3年間は、どんな体験でしたか。そして何を学びましたか。今日は、卒業式の日でありますので、せめて今日1日、ゆっくりこの3年間を振り返ってみてください。「私は、暁星高校でこんな体験をした。あんなことを学んだ。また、こんなことが暁星高校でなければ、得られなかった体験だったな」と、そういうふうにじっくりと振り返り、思い巡らしてみてください。そしてそれを簡潔な文章で纏めてみてください。そうすれば、「京都暁星高校を母校とする私としては、これから、こんなことを学びたい、あんなことを大事にして生きていきたい」と、そんな望みが皆さんの中に湧き上がってくるでしょう。そうなれば、素晴らしいことですし、とても大事なことです。どうか1日でも、2日でも、じっくりと京都暁星高校の3年間を振り返ってみてください。こういう「振り返り・思い巡らし」のことを英語で「メディテーション」といいます。このメディテーションが正しくできるようになると、それは皆さんの人生の土台をつくります。
さて、その振り返りのために申し上げるのですが、京都暁星高校にはこんなキャッチフレーズがありました。「一人ひとりと向かい合う学びの場」と。別の言葉で言うと、「一人ひとりが大事にされている学び舎」です。京都暁星高校では、それがどのように実践されていたか。いくつか挙げることが出来ますが、その1つは、通常の授業のほかに「補習授業」が多く行われていたということだと思います。皆さんも何度か補習授業を受けられたことがあるでしょう。そこでは、少人数で、対面方式で、先生と生徒が同じ目線で、先生はどう説明したら生徒が分かってくれるんだろうかと試行錯誤を重ね、生徒の表情を読み取り、対話をしながら、授業が行われたはずです。皆さんの中には、先生から呼び出しを受け、放課後残されて補習授業を受けたり、自分の方から進んで補習授業をしてくださいと申し出た人もいました。そしてその体験は、どんな生徒にとっても、悪い気持ちはしなかったと思います。むしろ、「学ぶ」ということは、教える者と教えられる者が心を通わせながら行うものであって、意外に楽しく、面白いものだったんだと気づいた人も多かったのではないでしょうか。学びは、温かい雰囲気の中で、良きコミュニケーションの中で行われる、と知ったのではないでしょうか。そこから、皆さんは、少しずつ、心の窓が開いていき、いろんなことに興味を持つようになってきたのだと思います。私は、これこそ京都暁星高校の特色だと思います。放課後、クラブ活動のない暁星ならではの特色が、図らずもこんな形で現れているのですね。皆さん、どうか母校で学んだことを元手にして、もっともっと知識を深め、拡げていってください。皆さんは若いですが、学びについては、もう無駄にする時間はありません。卒業されて進学する人も、社会人になって働く人も、学びはこれからです。時間を惜しんで学び続けてください。
最後に、卒業される皆さんはすでに選挙権を持っています。世界の9割の国では、18才になると選挙権を持つのだそうです。なぜそうなのでしょうか。若い人々に政治に参加してほしいからです。特に日本は、大変な高齢化社会なので、若い人々の声を生かさなければ、日本をプロモートする力が出てこないからです。そうなってしまうと、日本には希望がなくなります。投票に行くということはもちろん大事なことですが、それだけでなく、日本社会の仕組みや国際社会の動きに興味を持ち、政治に関心を持ってください。それらのことは、皆さんの暮らしに直結し、国民としての命運にかかわるアイテムです。現代社会においては、知らないということは、端的に言って不利です。どうか皆さん、広く、深く学び、物心両面で人生を豊かなものにしていってください。そして粘り強くサバイバルしてください。強くなってください。
本日はまことにおめでとうございます。

3年生の各教室では,後輩たちが心をこめた黒板アートで先輩たちの門出をお祝いしていました。

 

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