釜ヶ崎体験学習

 2月1日と2日の1泊2日で3年生4名と教員4名の計8名で釜ヶ崎に行ってきました。朝5:00に暁星を出発し,7:15頃に宿泊先の「イエズス会司牧センター旅路の里」に到着しました。早速,全校生徒で集めた支援物資を積みおろし,炊き出しが行われる三角公園へ向かいました。毎週土曜日に,釜ヶ崎高齢日雇労働者の仕事と生活を勝ち取る会(通称:勝ち取る会)がここで炊き出しを行っています。こちらに野菜とお米を運び,まずは野菜切りから行いました。人参はフードバンクから提供されたもので、梅や猫のような形にくり抜かれ、本来処分されるはずの縁側の部分を細かく切って調理しました。事前学習でそのことを学んでいましたが,実際にその状況を目の当たりにした生徒たちはショックを受けていました。

 11:30に配食が始まりました。今回はアサンプション国際中学校・高等学校の生徒さん16名と一緒に配食を担当させていただきました。炊き出しに来られた方一人ひとりに笑顔と明るい声で直接食事をお渡ししていきました。炊き出しが終わったあとにある生徒が,毎回炊き出しに来られているシスターマリアに「あなたの笑顔は素敵だった」と声をかけていただきました。この日並んでいた方は230名で,計423食を配りました。

 炊き出しが終わったあと旅路の里に戻って振り返りシートに記入しました。その後,旅路の里の福田紀子さんから釜ヶ崎についてのオリエンテーションをしていただき,釜ヶ崎周辺を一緒に巡りました。昨年12月に強制退去させられたあいりん総合センターやNPO法人釜ヶ崎支援機構が運営するあいりんシェルター,缶コーヒーが50円の激安自動販売機,簡易宿泊所(通称:ドヤ)が改装されてできた福祉マンションやインバウンド用のホテルなど釜ヶ崎の中をようすを説明してもらいながら歩きました。

 生徒たちの分かち合いより

 支援する側の強さを感じた。こんな大変な活動を自分の時間と労力を差し出して毎週行っていることが凄いと思った。

釜ヶ崎のおじさんたちは自分たちの目をしっかり見て挨拶やお礼を言ってくれたり,会釈で感謝を表してくれたりして,おじさんたちへの印象が変わった。

ロッカー専用の建物があるのをはじめて見た。これがあるからこそ,おじさんたちは自分が寝るスペースを確保されている。

コロナ禍でもシェルターに200人も入っていたと聞いたが,どのように生活していたのだろうか。

 この日の夜は,野宿者ネットワークの代表である生田武志さんに来ていただいてお話をうかがいました。ご自身の経験も含めた日雇い労働の実態,野宿者の変化,少年たちの襲撃事件,襲撃を助長する大人たちの偏見,野宿になったら元の生活に戻ることが難しい社会構造など,釜ヶ崎に集まった労働者たちの厳しい現実の話をたくさん聞かせていただきました。その後,ふるさとの家に集まり,一緒に夜まわりに参加させていただきました。釜ヶ崎周辺→心斎橋グループと山王方面グループに分かれて,一人ひとりにお声がけをしてカイロとマスクを配りました。

 翌日はフランシスコ会のふるさとの家を訪ねて,本田哲郎神父様のミサに参加しました。90年代に釜ヶ崎に来られて以来,労働者たちと共に闘い,共に歩んで来られた神父様。82歳になられても,力強い言葉で生徒たちに語りかけてくださいました。

アガペーは愛と訳されることが多いけど,人を大切にするということ。

掟を守ったりミサに参加することが一番大事なのではなく,『私があなたたちを大切にしたように,あなたたちも互いに大切にしなさい』ということをキリストは伝えたかった。

これなら信徒でなくてもできる。

ミサの後は,聖母被昇天修道会のシスターマリアと一緒に分かち合いの時間をもちました。一人ひとりが2日間の体験の感想を発表したあと,シスターからお言葉をいただきました。

彼らは貧しくて家がないから釜ヶ崎に来たのではない。仕事を求めてここに来た。

家族を養うため,仕送りを送るために釜ヶ崎に来て働いていたが,怪我や病気や高齢のために仕事ができなくなってしまい,家族に送ることができなくなった。それなら家に帰ったらいいのにと思うけど,彼らは「帰らない,帰れない」という。

彼らが怠けているのではなくて,「日雇い」というシステムを作った行政の在り方が凄く影響していて,その結果野宿せざるを得なくなっていることを私たちは知らないといけない。

炊き出しで「ありがとう」と言ってくれるけど,彼らが本当にほしいものは仕事。自分で仕事をして稼ぐことで,人としての尊厳を守ることができる。ただ「かわいそう」ではなくて,私と同じ人としての尊厳を持っていると認識して大切にしなければ意味がない。

私たちは新しいスマホを手に入れると一時的には嬉しくなるけど,時間が経てばまた新しいものが欲しくなる。そういう生き方が本当の意味での幸せなのか考えてほしい。

すべての人間は,基本的な衣食住が保障されなければならないけど,それが守られていない。労働者に仕事をさせるシステムに大きな構造悪があることに気づき,なんでこんな差があるのかということを考えてほしい。

 最後に,お世話になった福田さんとの分かち合いをしてから丹後に帰ってきました。暁星3年間でたくさんの体験やボランティア活動がありますが,この釜ヶ崎体験学習は3年生の集大成となるものです。身近な日本なのに,全然知らなかった社会の底辺で力強く生きる釜ヶ崎の人たちの人情味あふれる生き方に触れ,改めて自分たちがどう生きるべきなのかを考えるきっかけをいただいたと思います。これぞカトリック学校だからこそできる体験。今回もたくさんの方にお世話になりました。ありがとうございました。

PAGE TOP