校長講話 抄録

 おはようございます。

 先週の月曜日には今年のクリスマスに向けてのメッセージを読んでいただきました。今年は戦後70年の節目。日本の社会では憲法第9条と関連して、集団的自衛権の行使容認を巡って、様々な議論が交わされました。多くの人々にとって、今年は平和について考え、学び、行動する年だったと思います。皆さんも文化祭で"平和"を取り上げました。

 そこで今年のクリスマステーマをルカによる福音書からとり、「地に平和」としました。メッセージの中で、今年のノーベル平和賞、チュニジアの「国民対話カルテット」"対話"。ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領。教皇フランシスコの生き方。日本の天皇、皇后両陛下。そして、教皇ヨハネ・パウロ2世の広島メッセージに触れました。まず知らないことを知ってほしい。チュニジア、ウルグアイはどこにある?ムヒカ大統領、教皇フランシスコ、教皇ヨハネ・パウロはどんな人物か?

 今日は、ヨハネ・パウロ2世について触れてみたいと思います。教皇(英語でPope)は世界に12億人の信者がいるカトリック教会の最高責任者です。現在の教皇はフランシスコ、その前がベネディクト16世、その前がヨハネ・パウロ2世です。26年間教皇を務められ、その間、世界129か国を精力的に訪問し、宗教の枠を越えて、世界全体に大きな影響を与えてきた教皇です。世界のどこに行っても、カトリック信者でない人からも歓迎を受け、特に若者の心を惹き付けました。日本にも来られました。歴代教皇として初めてです。34年前の1981年2月、4日間の滞在で東京→広島→長崎と、精力的に移動し、メッセージを出されました。

 私は夜行列車で東京へ。そして当時の後楽園球場で4万人以上の人が集まった野外ミサにあずかりました。横殴りの雨の中、2時間以上も続いたミサでした。来日してからも時間をけずり、勉強してきたという日本語によるミサ、説教でした。夕方からは日本武道館で「Young and Pope」という集会が開かれました。一緒に行った本校の生徒も参加しました。宗教色のない形で、日本の若者と触れ合う唯一の機会でした。一般の若者との対話集会。テーマは"希望・愛・平和"でした。集会の初めに全員に向けてのメッセージがありました。その一部を読んでみたいと思います。

 愛する皆さん、皆さんは素晴らしく進歩した技術社会の中に住んでいます。皆さんは生活を楽にし、面白く、また、楽しくしてくれるものに囲まれています。しかし、進歩はそれだけで人間の欲求を満たしてくれるわけではありません。皆さんの心に平和をもたらすものでもありません。むしろ現代の進歩に伴う物質主義や、楽な生活や自己中心的な生き方がいつの間にか皆さんの生活の中に入り込んできて、本当に満足を与える道徳的・精神的価値を揉み消してしまう危険があります。

 34年前のメッセージです。先を見通している教皇です。人生の挑戦をともに受けて立つこと。お互いに関心を持ち合うこと。頂上を目指す登山者のように皆が手を取り合って、人生の目標を目指して努力すること。これが現代の若者の使命なのです。

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