校長講話 抄録

  私たちは、そんな意地悪をするつもりがないのに、ついつい相手の気分を害するようなことを言ったり、したりすることがあります。でもできることなら、そのようなことがないようにして生活することが必要です。そこで今日は、イソップ童話の「胃袋と手足のけんか」を読んでみたいと思います。

 

  ある時、からだの手足が胃袋にたてをついた。

  「あなたは、ぜいたくに暮らしてなまけてばかり。まったく仕事をしていない。きつい仕事はすべて、おれたちがやらされる。これでは、あんたにこきつかわれる奴隷じゃないか。でももう仕事はやめた。明日からは、あんたが自分ひとりでやりくりすればいい。」

  手足はそのことばを実行に移したので、胃袋は飢えに苦しめられた。案の定、からだじゅうがたちまち元気をなくして、それとともに手足はぐったりしてゆく。そして愚かなことをしでかしたな、と手足が悟ったときには、すでになすすべもなかった。

 

  手足が「おなかは何もしないで、僕らが作ったり、運んだりした食物を食べるだけでずるい」と食べ物を運ぶのをやめてしまうという話です。つまり足は動き回るし、手は料理をしたり、できたものを口に運んだりするが、おなかは何もせずにずるいと言うのです。それで手足は食べ物を作ったり運ぶのをやめてしまったのです。

  ねらいどおり、おなかは、おなかがすいてしまって、困ることになってしまうのです。ところが、栄養が全身に供給されませんので、手足までが衰弱してしまうという話です。

  この話を聞いたある人は、次のように答えました。

  「手足には手足の、おなかにはおなかの役割があります。つまり、おなかは、食べたものを消化するという大切な役割を担っています。手足だけが働いているわけではありません。手足の働きは目に見えますが、おなかの働きは目に見えないだけです。ですから、手・足・おなか、それぞれが働いているのです。人間は、仲間と協力し、助け合って生活することが、大切だということを言おうとしているのだと思います」もう一人はこう答えました。

  「自分の利益だけを考えないで、相手のことをも考えることが大切で、自分勝手に行動すると、この話のように自分も被害を受けることになるのではないか。」

  人間は一人では生きていけません。互いに人に学びつつ、力を寄せ合い、共に生きていくことが大切です。学校は、集団生活をするところです。それぞれの個性を生かしつつ、共に尊重し合いながら生きていくところなのです。だから、お互いの信頼も必要でしょう。

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