校長講話 抄録

 鶏の卵がかえるとき、カラの中からヒナがつつきます。同時に母鶏がカラの外から同じところをつつきます。学びも外からの刺激や情報と内からのはたらきの接点のところに素晴らしい学びが生まれるのです。ですから先生たちの教える力と同時に、生徒みなさんの「学ぶ力」「学ぼうとする力」を磨かなければ、十分に学力をつけることはできません。学力というと普通には正しい知識や技能をどのくらい身につけたかという結果としての「学んだ力」をイメージしますが、「学ぶ力」とは、現在の課題解決力や教わったこと、出会ったこと、与えられた情報をいかに力として吸収するか、身につけるかという力でしょう。また「学ぼうとする力」は関心の向きというか、意志を持ってさらに学ぶ姿勢というか、そういうものです。

 「もっと知りたい」「わかるようになりたい」「もっと教えてほしい」という気持ちがなければ成長していきません。教える側と教えてもらう側、どちらの力も必要なのです。この節目の時、振り返ってみてください。

 もう一つ、ある作家の言ったことで、こんな言葉があります。

 「新しい靴を買うと、初めはとても大切に履いて汚さないようにする。しかし、何かの時に汚してしまうと、あまり気にならなくなる。そして汚れれば汚れるほど、もう汚すことも何とも思わなくなってしまう。・・・」

 という言葉です。誰でもそういう覚えがあることでしょう。何も靴に限らず、服でも持ち物でもそういうことがあるように思います。この作家はもちろん、人間の心・精神のことを特に言いたかったのでしょう。人間はいつの間にか純粋な心をなまけや妥協に明け渡し、自分の本当の姿を見失ってしまいがちです。その反面、いつも初心に立ち返り、純粋は精神を取り戻しつつ、絶えず前に向かって歩みたいと願うのも人間の特性であると言えるでしょう。

 みんなが、それぞれのスタート地点に立ったときに持っていた原点をしっかりと確認し、いつでもどんな時でも原点に立ち返る純粋さを大切にし、慣れてしまわない、怠らない、初心を大切にしてほしい。

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